書籍-Book
『親子は生きづらいーー”トランスジェンダー”をめぐる家族の物語』
【内容】 親子は、なぜこんなにも分かり合えず“生きづらい”のか――。 トランスジェンダーである“僕”は、幼い頃から抱いてきた違和感が成長と共に膨らみ、ある日、家族へのカミングアウトを決意する。 “僕”の語り― 「男になりたい」ずっと嫌なことばかりで、我慢ばかりで生きてきた。 でも、泣き叫ぶしかできない僕を見る母親の目は、冷ややかだった。 ムカつくのに、あの人に愛されなかった思うことが、すごく悲しかった。 “母”の語り― 念願の娘が息子になんて。天と地がさかさまになるような気持ちだった。 美穂は、なんてわがままな子なんだ、と。 受け入れることはおろか、話を聞くことすら私にはできなかった。 (「カミングアウトの明暗」より) “僕”と“母”。親子それぞれの肉声で語られる物語は、溶け合うことなく互いに時を刻み、やがて予期せぬ軌道を描いてゆく――。 本書は、年月を重ねるごとに変化する、トランスジェンダーを取り巻く問題が克明に記されるとともに、戸惑いや葛藤を行きつ戻りつして進む、母親の本音が生々しく語られるノンフィクション作品。家族だからこそ伝わらない複雑な想い。理解とは何か。共に生きるとは何か。この小さなひとつの家族の物語に、どこか「わたしたち」自身の姿を見出さずにはいられない。 親子の語りを受け、ジェンダー・セクシュアリティを専攻する臨床心理士・佐々木掌子氏(明治大学)による「解説」と、フェミニズム・クィア理論を専攻する清水晶子氏(東京大学)、臨床心理学者・東畑開人氏(白金高輪カウンセリングルーム)を迎えた鼎談「願われた幸せの先――「生きづらさの理由」は説明できるか?」を導きの糸に、「違ったままで、でも共に」生きるという結論にたどりついた、家族の物語を紐解いていく。
【目次】 第1部-とまどいの中を生きる――カミングアウトと家族の物語 序章-親へのカミングアウト 第1章-誕生と違和感(幼少期~中学校時代) 第2章-反発と孤独(高校~大学時代:カミングアウト前) 第3章-カミングアウトの明暗(告白と母の背景) 第4章-母と子、異文化の咀嚼と変化(母との対話と終戦) 第5章-身体の変化と初めて生まれた“夢”(手術~大学受験/生き直し) 第2部-長い闇を超えて 序章-22歳から見る未来 30歳から見た過去 第1章-男と女のはざまで――境界から見えたもの 第2章-心地よさと寄る辺なさと――当事者コミュニティへの帰属と格差 第3章-傷つく私・傷つける私――立場の反転による価値観の瓦解 第4章-「わたしは罪人」――社会での葛藤と劣等感の再燃 第5章-暗い闇の中から――他者の関わりと回復への光 終章-違ったままで、でも共に――親子の10年間の結論 追伸-これからの「わたしたち」 解説-本書を立体的に理解する一助として/佐々木掌子 鼎談-願われた幸せの先――「生きづらさの理由」は説明できるか?/清水晶子・東畑開人・勝又栄政 あとがき
論文-Academic Paper
01.
幼少期からトランスジェンダーの子を育てる親の経験 ―― 保育・教育現場における課題と親を支える背景要因 (単著・査読あり)
The Experiences of Parents Raising Transgender Children from an Early Age: Issues in Childcare Settings, Education Settings and the Background Factors that Support Parents
2025, 家族研究年報 50(7月頃 掲載予定)
寄稿記事など-Contributed Articles, etc.
監修-Supervision

COSA
ジェンダー展
この地域から考えるジェンダー平等

大月町役場
多様な性のあり方を尊重するためのガイドブック


学会発表-Conference Presentation
2025/03/16 「性別不合の子をもつ親の経験:幼児期に子を受容した親の事例から」 日本GI(性別不合)学会 第26回研究大会・総会
2024/11/09 「トランスジェンダー女性の子を持つ父親の経験」 第97回 日本社会学会大会
2024/11/03 「『受け容れ』という家族実践――トランスジェンダーの子をもつ親の事例から」 第2回「家族実践の社会学」公開研究会
2024/10/25 Transition of Concepts Surrounding Transgender and Its Influence: with a focus on the concept of gender identity disorder in Japan 障害学国際セミナー2024
2024/09/07 「トランスジェンダー女性/男性の子を持つ母親の経験の比較」 日本家族社会学会 第34回大会
2024/03/16 「トランスジェンダー男性の子を持つ母親/父親における「子の理解」の比較」 GID(性同一性障害)学会 第25回研究大会・総会
2023/09/02 「トランスジェンダー男性の子をもつ母親の“経験” 」 日本家族社会学会 第33回大会
2023/08/08 「LGBTQ+の支援の在り方について考えるーー養護教諭としてできること」 北巨摩養護教員研究会
2023/07/21 「“多様な性”から見える世界ーー支援の現場に期待すること」 全国大学保健管理協会東北地方部会 第60回 全国大学保健管理研究集会
2023/04/02 「トランスジェンダーを取り巻く問題ーーソーシャルワーカーに期待すること」 日本ソーシャルワークリーグ第2回シンポジウム
2023/03/26 「トランスジェンダー男性の子を持つ父親の“経験”」 GID(性同一性障害)学会第24回研究大会・総会
2023/02/12 「親子は生きづらい ーー “トランスジェンダー”をめぐる家族の物語」 SOGI研究会2022年度公開研究会